骨粗しょう症について

骨粗鬆症とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる疾患です。日本には約1,280万人の患者がいると推定されており、高齢化に伴ってその数は増加傾向にあります。骨粗鬆症になっても痛みはないのが普通ですが、転ぶなどのちょっとしたはずみで骨折しやすくなります。骨折しやすい部位は、せぼね(脊椎の圧迫骨折)、手首(橈骨遠位端骨折)、太もものつけ根(大腿骨頚部骨折)、肩(上腕骨頚部骨折)などです。大腿骨頚部骨折を起こすと痛みで歩けなくなり、また脊椎圧迫骨折では背中や腰が痛くなったあとに、丸くなったり身長が縮んだりします。骨折によっては手術が必要です。また、骨折を契機に「寝たきり」になってしまう可能性もあります。

50歳以上の女性は一度検査しましょう

骨量は、20~30歳頃の若い時期をピークに、年齢とともに減少していきます。特に女性は閉経を迎える50歳前後から骨量が急激に減少し始め、女性ホルモン(エストロゲン)の減少や老化と関わりが深いと考えられています。しかし、早期に専門的な治療や適切な生活改善を行えば、骨密度の減少を改善し、骨折リスクを大幅に減少させることが可能です。

骨粗しょう症の検査

骨粗鬆症の有無を診断するにあたり、骨密度検査(DXA法)、骨代謝マーカーの検査、X線検査が有用です。

骨密度検査(DXA法)

骨の強さを判定する尺度の1つに「骨密度」があります。当院では、腰椎・大腿骨頸部で測定可能な骨密度測定装置(DXA)を導入しております。半年に1回のDXA法による腰椎・大腿骨の骨密度検査をお勧めいたします。

骨密度測定装置「ALPHYS LF」

当院ではHITACHI社製の骨密度測定装置「ALPHYS LF」を導入しています。腰椎・大腿骨で測定可能であり、非常に信頼性が高く、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」でも推奨されています。

DXA法:(dual-energy X-ray absorptiometry:二重エネルギーX線吸収測定法)
2種類のX線を測定部位に照射し、その透過度を解析して骨密度を調べる測定法です。短時間で測定でき被爆量も少なく、安全性に優れます。DEXA法は現在、骨量測定における標準的な検査法として重視され、骨粗鬆症の精密検査や、治療の経過観察、また骨折リスクの予測において非常に有用です。

骨代謝マーカーの検査

血液や尿によって「骨代謝マーカー」を調べることにより、骨吸収と骨形成のバランスがわかります。このバランスが崩れると、骨は弱くなります。また、骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では骨密度の低下速度が速いため、骨密度の値にかかわらず骨折リスクが高くなっています。

骨粗しょう症の予防と治療

骨粗しょう症の発症には、老化や閉経以外にも食事・運動習慣などが大きく関与していますので、食事・運動療法も骨粗しょう症の予防と改善には欠かせません。

食事療法

骨粗しょう症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、および骨のリモデリング(代謝回転)に必要なビタミンD・Kなどです。カルシウムは食品として700~800mg/日、ビタミンDは400~800IU/日、ビタミンKは250~300μg/日を摂取することが推奨されています。これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスの良い食生活を送ることが大切です。骨粗しょう症の人が避けるべき食品は特にありませんが、アルコールやカフェイン、リン(スナック菓子やインスタント食品)などの摂り過ぎには注意しましょう。過ぎた量のアルコールを摂取すると、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりします。カフェインもまた、カルシウムの排泄を促します。リンを摂り過ぎると、血液中のカルシウムとリンのバランスを保とうとして骨の中のカルシウムが血液中に放出されてしまい、骨密度の減少を招きます。

積極的に摂りたい栄養素を多く含む食品

カルシウム

乳製品(牛乳・ヨーグルトなど)、魚介類(干しえび・しらす・いわしなど)、大豆製品(納豆・豆腐など)、野菜・海藻類(チンゲン菜・小松菜・ひじき・わかめ) など

たんぱく質

肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品 など

ビタミンD

魚介類(しらす干し、いわしの丸干し、煮干し、鮭、サンマ、かれい、うなぎ)、キノコ類(干し椎茸・きくらげ) など
※日光浴により体内でビタミンDがつくられ、カルシウムの吸収を良くします。

ビタミンK

納豆、抹茶、ブロッコリー、きゃべつ、サニーレタス、モロヘイヤ、しゅんぎく、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にら など

運動療法

骨は運動をして体重負荷をかけることで丈夫になります。さらに筋肉を鍛えることで体をしっかりと支えられるようになり、バランス感覚も向上して転倒防止にもつながります。骨量を増やすには、激しい運動をする必要は無く、ウォーキングのような軽度の運動でも効果があります。

薬物療法

病状が進んだケースでは、食事療法や運動療法に併せて薬物療法を開始します。

主な骨粗しょう症の治療薬
骨の破壊を抑制する薬

ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)
骨吸収を抑制することによって骨形成を促進し、骨密度を増やします。特に有効性の高い治療薬で、現在、骨粗しょう症治療の第一選択薬です。骨を吸収する破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制します

選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)
女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、骨が壊れるのを抑制し、骨量を増加させます。骨質を改善する効果があると言われています。

ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤(デノスマブ)
骨を壊す破骨細胞の働きを抑えて、骨の破壊を抑制することで骨量を増やし、骨折リスクを減らします。この薬の特徴は、6ヶ月に1回の皮下注射でよい点です。

骨を作る薬

副甲状腺ホルモン製剤(PTH)
骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させる薬です。専用キットを用いて1日1回もしくは週2回自己注射する薬と、週1回医療機関で注射する薬があります。骨密度が著しく減少しているなど、骨折リスクの高い方に用いられます。 

抗スクレロスチンモノクローナル抗体(ロモソズマブ)

骨形成の促進と骨吸収の抑制が同時に期待できる薬です。月1回医療機関で注射します。骨密度が著しく減少しているなど、骨折リスクの高い患者様に用いられます。比較的新し薬で、骨密度の上昇効果が高いとされています。

骨の材料となる薬

カルシウム製
剤食事によるカルシウムの摂取不足、乳糖不耐症の方、胃腸の手術後などに用いられます。多くは、他剤と併用されます。

活性型ビタミンD3製剤
活性型ビタミンD3には、腸管からのカルシウムの吸収を促して体内のカルシウム量を増やす働きがあります。また、骨形成も促進します。

ビタミンK2製剤
ビタミンK2は骨芽細胞に作用することで骨形成を促進し、同時に骨吸収を抑制することで骨代謝のバランスを整え、骨の質を改善します。